2024.04.01
アメリカ演劇研究の新時代に向けて
岡本 太助
前回の役員選挙の結果、2024年4月1日付で日本アメリカ演劇学会の会長を拝命することとなりました。より経験豊富ではるかに優れた研究業績をお持ちの先生方を差し置いてのご指名に身の縮む思いですが、本学会のさらなる発展とアメリカ演劇研究の進展のために尽力する所存ですので、ご支援とご協力のほどなにとぞよろしくお願い申し上げます。
大学院生であった2000年代初めの頃に、指導教員の貴志雅之先生のお誘いを受け本学会の前身の全国アメリカ演劇研究者会議に入会して以来、本学会をホームグラウンドとしながら研究に勤しんでまいりました。気が付けば人生の半分近くをこの学会とともに過ごしてきたことになります。長らく会長を務められた貴志先生のそばで、編集委員や事務局幹事などの職務をこなしながら、学会運営のノウハウを学びました。今後はその経験を会員の皆様へと還元していきたいと考えています。
2010年8月に日本アメリカ演劇学会へと改組・名称変更されたことをはじめとして、本学会は近年大きな変化を経験してきました。研究者人口の減少や研究活動の場の多様化により、従来のシステムに依存した学会運営が年々難しくなる状況で、本学会も変革を余儀なくされています。新会長として、今後学会の活性化につながる様々な提案をしてまいりますので、会員の皆様にも積極に参加していただければと思います。
個人的な印象ではありますが、日本アメリカ演劇学会の強みは、関心のある分野や研究スタイルの点において、多様性に富むメンバーがそろっているところにあります。もちろん演劇作品を丁寧に読み解き議論を組み立てるオーソドックスな研究活動が本学会の屋台骨であることは変わりませんが、戯曲の分析は演劇の、そして演劇研究の営みのほんの一部分にすぎません。劇作や翻訳、演出や演技、上演にいたるまでのプロダクション・プロセス全般、さらには社会や文化における演劇の役割やその位置づけなど、演劇について学び演劇について語るための切り口は多岐にわたります。研究発表や学術論文には収斂しないこうした演劇の多面的なありようを、これまで本学会は十分に拾い上げてきませんでしたし、それは非常にもったいないことであると常々感じています。私の任期中に、より多くの方々に参加していただけるような企画を打ち出していきたいと思いますが、それには会員の皆様のご協力が不可欠です。
まことに頼りない新会長ではありますが、どうか暖かく見守り、支えてくださいますようお願い申し上げます。
2024年3月31日